急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
それも当たり前。
大也の方はと言えば、亜里砂に、例の『究極の仕返し』を成し遂げようと必死なのだ。
意識してもらわねば困る。
あの日、亜里砂に言われて恋を自覚し、祖父や湊の前では『仕返し』と言いながらも、自分が亜里砂に夢中である事なんて、とっくに知っていた。
本当なら祖父との約束期限があるため、亜里砂を誘ってデートなどし、押して押して一息に攻め込みたい所なのだが…いかんせん、仕事が忙しくて、その時間がまとめてとれない。
山藤に協力してもらい、どうにか僅かに時間を作り、小出しにして亜里砂に会いに行っているのが現状なのだが…。
口説かれた事は数え切れないが、女を口説いたことなどない大也は、なかなか上手いこと決められずに、日々悶々としていた。
そんなこととはつゆ知らず…。
亜里砂は、ベリーヒルズビレッジの至るところで出会う大也の、自分を熱く優しく見つめる瞳を思い出し、小さく溜息をついた。
初めてこのオフィスで出会った時の、あの…人を人とも思っていないような冷めた目が嘘のようだ。
まあそれが亜里砂の前だけの限定解除である事を、亜里砂は知らないのだが…。
話しているうちに、大也が無意識に亜里砂の髪を撫でようとして、ハッと思い止まるように手を引っ込め、微かに頬を染め苦笑し、気まずい思いをするのも一度や二度ではなかった。