急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
だがイベントの主催側で、影に徹し、会員様のカップル成立に奔走する亜里砂が、ゆっくりライトアップを眺める事などこれまでなかった。
(今まで落ち着いて見たことなかったけど…本当に綺麗ね…。さすが恋人達の聖地)
夢見心地でライトアップされた日本庭園を眺める亜里砂の背後から、そっと男が近づき、その肩にぽんとコートをかけた。
「きゃっ!わ…若様?」
「遅れてすまない。寒かっただろ」
「もう!吃驚したじゃないですか!って…うわーあったか〜ーい」
直前まで着ていたのだろう、大也の体温が残るコートの暖かさに、亜里砂は思わずほうと溜息を吐いた。
「最高級コートあったか〜って、違う!もう!これじゃあ若様が寒いでしょう!」
「どこの騎士ですか…」と呟き、慌ててコートを返そうとする亜里砂の手を、大也がいいからと止める。
「でも…」
「大丈夫、寒かったらこうすればいいから…」
隣にどかっと座った大也が亜里砂の肩を抱き、グイと自分の方に引き寄せた。
「ひゃっ⁉︎」
ぽすんと大也に寄り掛かるような態勢になった亜里砂は、一気に耳まで赤くする。
「若様、これはセクハラですー!」
亜里砂が手でグイーッと大也の胸を押して離れようとするが、大也はフフンと鼻で笑い、肩を抱いた手を放さない。
「もう昨日、しっかり抱きしめ合った仲だろうに」
「人聞きの悪い事言わないで下さい!あれは池澤の前だけの緊急措置じゃないですか」
「あの時だけって、俺言ったっけ?」
「…言ってないけどっ!」
「別に取って食おうと言ってるわけじゃない。下心もない。俺は人型カイロを抱いてるだけだ」
「やっぱり寒いんじゃないですかー!」
「寒い」