急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「ああ、初めて接触したのが数日前だからな。向こうで二年間、池澤に離婚を渋って見せながら、ずっと愛人と金を持って逃げる算段を立てていたんだろうな」

「…では池澤が、今更三吉さんの行方を探しても、無駄だという事なのですか?」

「ああ…たぶん…」

亜里砂の顔が曇る。

「どうした?」

「…いえ、なんだか…少し池澤が可哀想に思えただけです…。昨日彼は、まるで夢見るような顔で嬉しそうに、親元から離れ新しい事業を始めると語っていましたから…」

「亜里砂が気にする必要はないだろう」

「ええ…ですが…。彼は、あの結婚式の後、会長や社長から何度も殴られたと言っていました。三吉さんとの婚姻届も、彼を閉じ込めておいて、三吉さんと社長が勝手に書いて提出したのだとか…。昨日の若様の執務室でのお話を聞いても、彼は父親や兄から一度離れた方が良いと思ったんです…。
でも、そのための資金を全て持ち逃げされたとなれば、独立の話も無くなるでしょうね」

「ああ、会社の金を流用していた分は、父親と兄が補填すると言っていたから、あの親族の中での池澤の立場は以前よりもっと悪くなるだろうな。
気にするなと言いたいが…お前がどうしても気になると言うなら、一護の力で三吉を探しても良いんだぞ?池澤のためじゃなく、お前がすっきりするためなら、俺がどうにかして探し出してやる。世界中どこに逃げていたって、きっとすぐに見つかるだろうさ」

「…いいえ…若様。若様にそこまでしていただくわけにはいきません。昨日助けて頂いただけでも申し訳ないのに…」

亜里砂はふるふると首を横に振った。

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