急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「結婚までしようとしたのに、愛していないだけでなく、私はあまりにも彼に関心が無さすぎました。
今思えば…付き合っている時も、彼の言葉の端々で、彼が兄である社長に劣等感を持っている事は感じていましたし…父親である会長との関係もあまり良いものでは無いのだろうとは思っていました。
だから…若様の執務室でのお話を聞いてから胸が痛くてたまらないんです。
彼が女性にも簡単に手をあげて、それを悪い事だと思っていないのは、子供の頃から暴力が日常的に自分の周囲にあったから…。
彼が他人を見下した態度をとるのは、子供の頃から日常的に、自分が『愛人の子』として見下される環境にあったから…。
そんなこと…気づかなかった。
結婚しようとしたのに…何も知らなかった。知ろうともしなかったんです。
ほんと…自分が嫌になる…」

ポロリと涙を零した亜里砂を、大也が優しく抱きしめる。

「だからといって…彼を愛することができない私が、今更…こんな風に罪悪感を抱いて涙を流すのも…単に自己満足したいだけの偽善者みたいに思えて…本当に嫌…。
もう私はあの人に何もしてあげられないし…今になって近づいて来られても困るって、心から思ってるんです。それでも…悲しい。
あの人が、幸せでいてくれたら良かったのにっ!」


「亜里砂…」


ぽろぽろと止まらない涙を、上着のポケットから取り出したハンカチで拭ってやり、亜里砂の頭を労るように何度も優しく撫でていた大也が、ふと思いついたように言う。

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