急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「亜里砂…聞いて欲しいことがある…」

「…?はい…」

亜里砂が鼻を啜り、涙に濡れた瞳で自分を見つめ、コクリと小さく頷くのを見て、大也は語り始めた。

「亜里砂と初めて会った夜、祖父さんの病室で、俺がお前に『ポンコツ極まりないプレゼン』をしたのを覚えているか?」

「?はい、勿論」

「『俺は忙しいから、結婚したからと言ったって…年に数回顔を合わせるくらいで、嫌なら別に俺と会話をしなくていい。お前に恋人がいようがいまいが俺は全く気にしないし、お前も気にしなくていい。
実際、うちの親父とお袋は、そんな感じで上手くやっているから…』
そう言って、お前に『結婚を馬鹿にするな』って、思い切り引っ叩かれたよな…」

「う…あれは本当にごめんなさい…」

「謝らなくていい。俺はあれで目が覚めた」

大也はふっと笑うと、亜里砂から視線を外し、イルミネーションをぼんやりと眺め、再び話し始める。

「…あの時言った通り、俺の父と母の仲は、すっかり冷え切っている…。というか…そもそも祖父さんの命で、二人ともが嫌々した政略結婚だから…結婚前も後も、関係が温かかったことなど一度もないんだ…」

「…若様…」

「親父は若い頃から、祖父さん曰く『絵に描いたような救いようの無い放蕩息子』だったそうだ。経営の勉強もせず、家の金を湯水の如く無駄に使い…無類の女好き。
室町時代から商家を営み、代々嫡男が当主になるはずの一護で、唯一…嫡男なのに当主にならなかった男。祖父さんがそれを許さなかったんだ。実際、親父が当主になっていたら、一護は今、既に無かったかもしれない。
そんな親父が女絡みで問題を起こした時…。
命の危機に瀕しどうにもならず、祖父さんに助けを求めた。
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