急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
助けてやる代わりにと、祖父さんから出された条件が、祖父さんの知人の娘だった母と、『正式に結婚して一男をもうける事』だった…。
祖父さんは息子を見切り、生まれてくる孫に一護を託す事を決めたんだ。
母の方も…華族の流れを汲む家柄はいいが、実家の商売が上手く立ちゆかず、一護が助けるという条件で、身売り同然に父に嫁いだ」

「……」

「結婚をする時に、二人の間で元々そういう約束になっていたのか…嫡子の俺が生まれるとすぐ、父も母も役目を果たしたとばかりに、お互い別々の場所に家を買い移り住んだ。
生まれたばかりの俺は本家に残され、祖父さんと、家令と、家令の妻である乳母に育てられたんだ。
そして両親は今、お互いが、愛人やその子供らと、其々事実上の家族を持ち、暮らしている。
親父は二人の愛人と、四人の子供。母親も、愛人との間に一人の子供がいるが…一護の次期当主は、揺らぐ事なくこの俺と決まっているから、異父母弟妹との間での跡目争いは無い。
両親は…戸籍上ではまだ婚姻関係にあるが、何かの用事で年に数回顔を合わせる時も、二人会話も無く、目を合わせる事すらない。かと言って仲が悪いわけでもなく…ただお互いに興味がないだけなんだ…」

「……っ」

「跡目争いが無いから、俺と異父母弟妹との仲も別に悪くはない。会えば『兄さん、兄さん』と慕ってもくれる。
カナ…亜里砂も知っている秘書の山藤カナは、俺の腹違いの妹なんだが…あいつみたいに、俺の仕事を近くで手伝ってくれている異父母弟妹もいる」

「山藤さんって!若様の妹さんだったんですか⁉︎」

大也が頷く。

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