急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
弟や妹達が『愛人の子』として、心無い人間から傷つけられたと聞くと、兄として腹も立つから、あいつらを憎く思っているわけでは決してない。いつも近くにいるからか、義妹のカナの事だって殊更可愛い。
でも…両親から、命以外に俺が唯一貰った『大也』という名前は…実は望まない結婚をした親父の、祖父さんへのささやかな抵抗だったんだと、使用人達が噂しているのを子供の頃に聞かされた…。
異父母弟妹の名には全て、一護の一族の証である『金』の字が使われているからな。
俺だけ…金じゃないんだ。
子供の頃から周りに…俺は『特別な人間』だと言われ続けて育ってきた。異父母弟妹も揃ってそう言う。
だが…何が特別だ。
親の愛一つ得られなかったただの人間。いつまでも心の奥で弟や妹を羨んで嫉妬する、ただの女々しい男なんだよ…」

「あの…若様…」

亜里砂が大也の腕の中で身じろぎしながら言う。

「若様…あのぅ……あの…私…若様をすごく抱きしめたいんだけど…ダメですか?」

大也の腕から抜け出た亜里砂が、無意識の上目遣いで可愛いお願いをする。

「今、すごくギュッとしたいんです!ついでにちょっとだけ頭も撫でて良いですか?」

大也が「いいよ」と笑いながら言うと…。

「あ、これはあくまでも猿団子ですからね!では…失礼して…」

亜里砂は大也と向き合うと、その体をぎゅぅっと抱きしめた。

「スーツ皺になっちゃうかも…」

「いいよ…、あったかいから…」

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