急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「付き合っている間に…池澤だってこうして亜里砂に自分の辛い思いを吐いて、共感してもらう事はいつでも出来た筈なんだ。でも奴はそれをしなかった。
心の中に深い闇があるくせに、婚約者に自分の弱さをちゃんと見せず…『好きだ』とか『愛してる』とか…上辺だけ綺麗な言葉ばかりを並べて結婚しようとした池澤を、亜里砂が愛せなかったとしてもしょうがない。
今更弱さを見せつけられたところで、奴のために亜里砂が悲しんで泣いてやる必要はないんだ…。
二年も前のことだ。もう関係ないと割り切れ。
いつまでも過去に縛られ『一生結婚しない』なんて馬鹿なことを言うのもやめろ。
ちゃんと前を向け。未来を見ろ」


(もしかして…池澤のことで泣いて落ち込んでる私に…前を向けと言うために…誰にも言わなかった自分のトラウマをこうして話してくれたの⁉︎)

「若様…っ」

胸がいっぱいになった亜里砂は潤んだ瞳で大也を見あげた。

「私…」

(もう…この人のことをモラハラのダメ男なんて言えない…)

大也の黒曜石のような瞳に、美しいイルミネーションと…眉を下げ涙ぐむ亜里砂が映っている。

(綺麗な瞳…)

大きな手が亜里砂の頬を包んだ。

(もう…こうして触れられても…セクハラって言えない…。だって…こんなにも嬉しくて…ドキドキする…)

その黒い瞳がゆっくりゆっくり近づく。

「亜里砂…俺との未来を…」


大也の低く少し掠れた声をすぐそばで聞いた亜里砂は、そっと瞳を閉じた…。


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