急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
◇◇◇◇

「だーーーーッ!」

ガンッ!

小声で叫びながら突っ伏した亜里砂の額がデスクに当たり、鈍い音がする。

「痛…ッ!ゔーーっ…恐るべし…恋人達の聖地…」

亜里砂は額を押さえたまま小さく呟く。

(もう…恥ずかしくて消えてしまいたい…)

昨夜…キラキラと輝くベリーモールの屋上庭園。

『俺との未来を…考えてくれ…』少し掠れた声とともに大也の…それはそれは美麗な顔が近づいてきて…魔法にでもかかったように…思わず瞳を閉じてしまった…。

その直後…そっと唇が重なり…。
始めは触れるだけの優しいキスだったのに…。

(若様の馬鹿っ!)

次第に…大也のキスは亜里砂の全てを奪いつくしてしまうように激しくなった。

(身も心も…全部…どろどろに融かされてしまいそうな…キス…)

「うーーーーッ!」

(でも…ねだるように先に唇を開いてしまったのは、私なんだよね…)

角度を変え、何度も何度も優しく触れるだけの大也の唇に焦れて、吐息とともに少しだけ亜里砂が唇を開くと…。
許されたとばかりに、大也は舌で亜里砂の口内を侵した。
亜里砂が苦しくなって身を捩って離れようとしても、後頭部を支える大也の手がそれを許さなかった。

(誰も来なかったからいいようなものの…あんなの誰かに見られていたら…!)

亜里砂は手で顔を覆うが、昨夜から思い出すたびに羞恥心に襲われ、今は耳の先まで真っ赤だ。

(あんなキス知らないっ!したことない!
まさに百戦錬磨の手管っ!)

キスの途中でかかってきた山藤からの電話に、渋々感満載で嫌そうに出た大也が、海外の支社とのオンライン会議があるから戻らねばならない…と申し訳なさそうに告げた時も、亜里砂は余韻でぼーっと惚けていた。

< 175 / 217 >

この作品をシェア

pagetop