急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
◇◇◇

それから数日間は何事もなく過ぎた。

相変わらず…毎日というわけではないが、ベリーヒルズビレッジ内の所々で亜里砂は大也と出くわし、8階のオフィス前まで送られる日々。

ただ…亜里砂の大也に対する態度は、以前と比べ、かなりぎこちない。
目が合っただけで顔を耳まで赤くし、すぐに目を伏せ言葉も少ない。

だが大也の亜里砂に対する態度は、以前に比べ明らかに大胆になった。

これまで触れるのを躊躇っていた亜里砂の髪に躊躇いなく触れるようになり、短い逢瀬の間、愛しげに何度も頭を撫でる。
オフィス前での別れ際には手を握り、額や頬にキスを何度も落とし、名残惜しそうに去って行く。

(まだ付き合うとも…勿論結婚するとも…何も返事をしていないのに!これどういう状況⁉︎)

本来亜里砂は恋愛感情に疎く、異性に秋波を送られても中々気づかない。
北柴からなど、かなりあからさまなのだが、全く気づく気配もない。
過去を振り返っても…国内外の学生時代には何度か告白されたこともあるが…じっくりじっくり考えて、結局は『好きじゃないし面倒だから付き合わない』という選択をしてきた。

思えば自分から異性を好きになったことはない。

池澤の時は、周りを巻き込んだ彼の押しが強過ぎ、断り切れず、ついつい雰囲気に流されて付き合い始めてしまった。

実は亜里砂の初カレは池澤だったのだ。

そんな恋愛オンチの亜里砂が、こんな状況でどうにかできるわけがない。

あの時大也に『俺との未来を見てくれ』と言われたが…いったいそれはどういう意味なのか…?
普通に考えれば『結婚しよう』ということかなとも思うのだが…もしかして…大也の超甘々で過剰なスキンシップも、未だ猿団子の一環ではないだろうかと少し思っているくらい亜里砂はポンコツなのだ。

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