急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

亜里砂の抱える段ボール箱の上に、北柴は持っていた段ボール箱をどんと乗せると、慌ててタイミングよく降りてきた隣のエレベーターに飛び乗った。

「もう!北柴君ってば、最近こういうミスしがちよね…。最後に確認してって言ったのに。
チェックしなかった私も同罪か…。閉まる前に間に合うと良いけど。再開錠してもらうの面倒なんだよね…」


亜里砂は小さく愚痴りながら廊下を歩き、タワー端のベリーマリアージュサービス前で足を止める。

ドアを開けようとした瞬間、北柴が慌てて上に雑に乗せた段ボール箱から、サインペンが数本廊下に落ちて散らばった。

「きゃっ!もう!」

亜里砂がその場でしゃがみ込み、落ちたサインペンを拾おうとした時…。

オフィス横の非常階段の扉が音もなく開いた。





亜里砂は声を上げる暇もなく、背後から伸びた手に口を塞がれ、ズルズルと…オフィスの隣にある非常階段の扉の奥に引き摺り込まれる。

ベリーマリアージュサービスのドアの前には、放り出された段ボール箱と、亜里砂がかけていた伊達眼鏡だけがとり残されていた。


ガシャンッ!

非常扉が鈍い音を立てて閉まった。


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