急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「何を…言ってるの?私が貴方とお付き合いしていた時に、一護の若様と二股をかけていたって、そう言いたいんですか⁉︎
馬鹿にしないで!貴方と一緒にしないで欲しいわ!そもそも若様とは最近出会ったばかりなのよ。貴方が言ったことは下衆の勘繰以外の何物でもないわ。私の話をちゃんと聞いて下さいよ!」

(理解出来ないわ!)

思わず声を荒げてしまった亜里砂に、なぜか池澤は皮肉げな笑みを浮かべた。

「離れている間に、君は随分感情豊かになったんだな…。俺に向かって声を荒げている君なんて想像できなかった。だがそういう怒った顔もいいね。新鮮でいい」

(そうよ。披露宴であんなとんでもないことがあってさえも、冷静でいられたくらいだもの。あの頃は気づけなかったけど…私はこの人の前で、自分の心をちゃんと見せたことが無い。そしてこの人のこんな顔も、あの頃見たことは無かった。つまりは…そういうこと…)


「とにかく…貴方が何を言おうとも、私達は二年前に終わったんです」

(たぶん始まってもいなかったけど…)

「今、あなたと私は何の関係もありません。二年前に貴方と貴方の周りの方々が私にした仕打ちをもうお忘れですか?
私とあなたの人生が交わることは、この先永遠にない。だから…私が今、誰と付き合おうが、貴方には一切関係のないこと。今は、こんな風に二人で話すことも迷惑です。なのでこれからはたとえ道ですれ違っても、私に声をかけたりしないで、知らぬふりをして通り過ぎて下さい」

亜里砂は必死に心を落ち着かせながら、『今』と『これから』を強調してきっぱりと言う。


池澤は血が滲むほど唇を噛みしめ、俯いて亜里砂の投げる言葉を聞いていたが…やがて顔を上げた時には、瞳に隠せないくらいの狂気を宿していた。

「『今』『今』と…ごちゃごちゃうるさいんだよ!それがどうした!俺に口答えをするな!どいつもこいつも偉そうに!
家名に傷をつけたとか…人として恥ずかしいとか…これだから愛人の子はダメなんだとか…!
いつもいつも俺を馬鹿にして…力尽くで押さえつけやがって!
俺だって!いや…俺が、俺こそがいつも被害者なんだ!
あの時…神の前で愛を誓っておきながら、君もさっさと俺を見限ったよな。
俺が『今』不幸なのは、全部君のせいだ!
一護の御曹司…。あの男も俺を押さえつけた!あの男、偉そうに俺になんて言ったと思う…?
亜里砂に金輪際近づくな、二年前のことを君に謝れって。俺には君に近づく資格が無いと言いやがった!
資格ってなんだ!きっと俺が妾腹だからと馬鹿にして…」

< 183 / 217 >

この作品をシェア

pagetop