急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「じゃあ…!あなたがこんな風に私に近づかなければ、それで良い話じゃないですか!それに若様は貴方を馬鹿にして言ったんじゃないわ!」

(だって…若様は、自分の弟妹が愛人の子と馬鹿にされるのに腹が立ったって言っていたもの!)

「ふざけるな!資格なんていらないんだ!だって君は、二年前も今も俺のものだ!あんな男のものじゃない!」

「…!違う!」

「違わないッ!俺のものなんだッ!」

「いいえ、違います!私は貴方のモノなんかじゃありません!
お願いです!もう…私に構うことなく、あなたはあなたの場所で、ご自分の幸せをちゃんと見つけて下さい!」

「ふんっ!幸せなんて…俺には一生手に入らないものなんだよ」

再びギリっと噛み締めた池澤の唇の端から血が流れた。

「何もかもあの女に奪われてしまった…。
財産も…君との未来も。
この世に愛人の子として生まれた時から、俺の居場所なんて、この世界のどこにも無かった!
だけど…あの時…君と結婚できてさえいれば…俺はきっと幸せになれたに違いないんだよ。
あの時…君と結婚できてさえいれば…」


もしあの時…三吉涼香の邪魔が入らずに、池澤公平と結婚していたら…今頃自分はどうなっていただろう。
亜里砂もそう考えたことが一度もなかったわけじゃない。
前職をまだ辞めることなく…きっと…池澤とそれなりに幸せに暮らしていけたのではないかと思ったりもした。

でも…。
既にあったことを無かったことには出来ない。
たとえあの日に戻ったって、きっと同じ選択しか出来ない!

「そもそも俺があの女に目をつけられたのは、君のせいなんだ!君があの女に恨まれていたせいだ!俺が財産をあの女に盗られて、こんな惨めなことになってしまったのも、元はと言えば全部君のせいじゃないか!謝罪しなければいけないのは君の方だろう?なぜこんなに不幸な俺の方が謝らなくてはいけない?
その上、婚約者と言うからには、君はあの一護の御曹司と結婚するんだろう?
ふざけるな!俺がこんなに不幸なのに!俺を不幸にした君だけが幸せになるなんて、絶対に許せるもんか!」

(若様との結婚は決まってなんかいません!婚約者というのも嘘です!でも今それを言う必要はないわ)

「たとえ私が三吉さんに恨まれていたにせよ、彼女の誘いに乗ったのは、貴方自身じゃないですか!私という婚約者がいながら、三吉さんと深い関係を持ったのは、紛れもなく貴方の意思ですよ!何もかも全て都合良く他人のせいにしないでください!」

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