急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「うるさい!うるさい!うるさい!黙れ!
俺を馬鹿にしやがって!俺が愛人の子だからそうやって馬鹿にするのか⁉︎」

「そんなの!貴方が愛人の子だろうが、正妻の子だろうが、それで何が変わるって言うんですか!あの頃も今も、私はそんなの気にしたこと無いし、馬鹿にしたことも、するつもりも無いわっ!
貴方のことを『愛人の子』だって、これまで一番蔑んで、いつまでも馬鹿にし続けてきたのは、他の誰でもなく…貴方自身なんじゃないですか⁉︎」

亜里砂の言葉に池澤がハッとし、暫し呆然とすると、次の瞬間、瞳に涙を浮かべ、くしゃりと顔を歪めた。


「……っ!本当に…うるさい!俺のことなんか何も知らないくせに!俺が子供の頃からどんな気持ちで生きてきたかも知らないくせに!
あんな…苦労も苦悩もした事も無い…生まれながらに恵まれた正統な御曹司に愛されている君に、何がわかるって言うんだ!」

「貴方こそ!彼の何がわかるっていうんですか⁉︎悩みがない人間なんているわけないでしょう。彼だって…幼い頃から苦しい思いをいっぱい抱えてる…。でもそれを誰にも言わず…自分で少しずつ消化しながら生きてきたのよ!」

『自分は…親の愛一つ得られなかった、ただの男だ…。今でも、父母に愛されている義弟妹を、羨みながらずっと生きてる…』

あの夜、月を見上げながら淡々とそう言った大也。

彼を知る多くの人は、『一護の若様』である大也が、そんなやるせない気持ちを抱えながら生きてきたとは思いもしないだろう。

SSSランクの俺様で…財界のトップの家に生まれ育ち、容姿にも恵まれ、人を圧倒するオーラを持ち、他人に崇められ自信満々に堂々と生きているように見える彼を、池澤が言ったように『苦悩も苦労もない』と思い込んでいる人は多いに違いない。

でも…複雑な環境の中で、彼に暖かい家族関係は得られなかった。

これまで誰にも言わなかったという大也の『辛さ』や『弱さ』を、既に知ってしまった亜里砂は、大也の幼い頃からの悩みや苦しみ、悲しみや諦めを知らない人間に、彼の生まれた家や、地位や見てくれだけを見て『なんの苦悩も苦労もない』と、決めつけたように言われるのは許せなかった。


「若様は…貴方みたいに自分の身に起きた不幸を嘆き、何もかも他人のせいばかりにして腐っていたりはしない人だわ!」

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