急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

(ああ…、馬鹿!なんでこんな挑発するようなこと言っちゃってるんだろう。こんなの…今この人に言ったって、何の意味もないのはわかってるわ。
でも!きっと若様が池澤の立場だったとしても…絶対にこの人みたいに後ろ向きなことはしていないはず!だって私に、前を向いて未来を見ろと言ってくれた人だもの!)


亜里砂の強い言葉に…なぜか池澤が、涙を瞳に湛え亜里砂の顔を見つめたまま固まった。

更に愕然とした顔で問う。


「まさか…まさか…俺の時のようにあの男の一方通行じゃなくて…君も…あの男のことを本気で好きなのか⁉︎」

(私が…若様のことを好きかって?
考えるのをどこまでも避けてたっていうのにっ!こんなところでそんなことを訊いちゃう⁉︎でも…)


「……すっ……好きですけど。たぶん…」


『たぶん』は亜里砂のささやかな抵抗だった。

(馬鹿みたい…。生まれて初めての愛の告白を…なんでこんなところで、若様本人にでもなく昔の婚約者相手にしちゃってるんだろ。
馬鹿みたいとは思うけど…でもこんな状況で、自分を誤魔化したりはできない!)

小さな小さな声なのに…自分を見上げて挑むように言う、亜里砂の揺るぎない瞳を見た池澤の顔が、またくしゃりと歪む。


「…私は彼を本気で好きですけど…たぶん。でもそれが何か?貴方には今さら一切何の関係もない事です」

「なぜだ⁉︎君は恋も愛も知らない、恋愛に対して心が全く動かない女だったじゃないか!
俺は初めて君に会って恋に落ちた日から、付き合っていた間も、毎日君に好きだと…愛してるとずっと言い続けていた!愛の言葉も、プレゼントもいっぱい送って、周りまで巻き込んで!君が振り向いてくれるまで、大変な努力と我慢をしたじゃないか!
でも君は…俺を好きだとも愛しているとも…嘘でも一度も言ってくれなかっただろう。逆に、応えられないと…贈ったプレゼントを返してくる始末だった。
君を逃げられない状況に追い込んで、ようやく付き合えた時、俺がどんなに嬉しかったかわかるか!
なのに付き合い始めてからも、君の心は全く動かなかった。
だから…とりあえず結婚してから俺を好きになって貰おうと、焦って結婚も強引に決めたんだ。
でも!どんなに俺が頑張っても君が俺に心をくれることは無かった…。結局結婚もダメになり…君は最後まで俺をこれっぽっちも愛してはくれなかった!
そんな…心の動きにくい君が…そんなに簡単に本気で誰かを好きになるなんてことがあるのか⁉︎
俺はあの時、あんなにも我慢して努力してやったのに!
俺と奴ではいったい何が違うというんだ⁉︎
奴はどんな汚い手を使って君の心を動かしたんだ⁉︎」


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