急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「私の心を得るために…たくさんの努力や我慢をしてくれていたと…?」

「そうだ…だからっ!」

「いっぱいの努力や我慢なんてっ!してくれなくてよかったんですよ!『好きだ』とか『愛してる』とか…上辺だけの綺麗な言葉で飾るばかりじゃなく、結婚するのなら、汚いものも…醜いものも…私は貴方の本当の心を全部見せて欲しかった!先程貴方は『俺が子供の頃からどんな気持ちで生きてきたか何も知らないくせに』と言いましたが、知らなくて当然なんです。だって貴方は何も教えてくれなかったでしょう」

「今さらそんなこと言うなっ!」

「そう……。だから…今さらなんです。
二年前に、貴方は私に心のうちを少しも見せてはくれなかった。私は、そんな貴方が並べる綺麗な言葉を信じられなくて…想いを返せなかった。
恋愛に疎く未熟だった私は、貴方の本当の心を知りたいとも言わず、流されるままあの日を迎えてしまった…」

「俺の心の中なんて、自分でも目を背けたくなるこんな真っ黒で泥々なもの…あの頃の君に見せられるわけがなかった!」

「…だからこそ思うの…。あの時、三吉涼香さんの横槍が無く…私たちが無事に披露宴を終えて一緒に暮らし始めていたとしても…きっとすぐにうまくいかなくなっていたわ…。
貴方は結婚したって、私が離れて行かないように、その真っ黒で泥々したものを私に見せてくれる気はさらさらなかったでしょう?
たとえ結婚して一生添い遂げたとしても…私は貴方を、死ぬまで心から信じることができなかったと思います」


「……!」


「まだ出会ってひと月も経っていませんが…私と一護の若様との出会いは、ぶっちゃけ最悪だったんです。心の動きにくい私が、つい心を動かしてしまった程…本当に最低で嫌な男だと思いました。
私は最初、彼のことを…他人の都合を一切考えずに勝手なことばかり偉そうに言う、俺様のダメダメモラハラポンコツ男だと思って…」

(思いきり横面をひっぱ叩いちゃったのよね…。しかもよりによって一護金持の目の前で…)

「お互い、到底恋愛感情など湧くような状況ではなかった筈でした…」

(本当に…不思議。あの夜の私の何が彼にハマったのか)

「でも…思いがけず彼から、若様本人すら自分の気持ちがよくわかっていないような…『愛してる』みたいに綺麗な言葉もない、それはそれは変てこりんで奇妙で不器用な告白を受けて…。
とても戸惑いましたが、その時…胸が凄くドキドキして…心が動いたんです」

(君に蹴られたり打たれたりする痛みすら嬉しく思う、って何よ。ほんと、変態)

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