急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
上階の階段に足音がした。
一瞬、池澤が動きを止め、不安そうに眉を顰めて顔を上げる。
誰かの…足音が確かに聞こえる!
「亜里砂っ!」
(……ゎ…か…)
亜里砂の唇が僅かに動く。
階段を駆け降りてきたその人の…その震えるようないい声を聞いた瞬間から…亜里砂は涙が溢れて止まらない。
バーーン!
「亜里砂さん!」
非常扉が突然開いて、数人の人影がバタバタと階段室に飛び込んできた。
(もう…だいじょうぶ…なんだ…。ほんとに…たすけに…きてくれた…)
「お前!何をやってるんだ!」
上階から階段を何段も飛ばし、疾風のように駆け降りてきた背の高い黒い影が叫ぶ。
次の瞬間…目の前を長い脚が舞い、亜里砂の上から池澤の体が吹っ飛び、踊り場の壁にぶつかり、くしゃりと崩れ落ちた。
「ありさっ!」
誰かにぎゅっと強く強く抱きしめられた気がしたが…。
涙をポロポロと流しながら…耐えに耐えた亜里砂の意識は、そこでとうとうブツんと途切れて消えてしまったのだった。