急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

◇◇◇◇


誰か…女の人の…シクシク泣く声と…鼻を啜る音がずっと聞こえている。

(だれ…?これは…みゆき…さん…?どうして…?どうして美幸さんが…こんなに泣いて…いるの?)



大きくて温かな手が優しく髪を何度も撫でるのを感じて、亜里砂はゆっくり…ゆっくりと目を開いた…つもりだったが…なぜか左目は少ししか開かない。

(わたし…どうして…)


「亜里砂!」
「あーちゃん!」

ほぼ同時に枕元の両サイドから亜里砂を呼ぶ声が聞こえる。

「い…っ!」

首を動かそうとしたが、体中が猛烈に痛み、声にならない声が漏れ、亜里砂は顔を顰めた。

「……ぅっ!」

顔を顰めたことでまた、さまざまな傷にさわり、再び激痛に見舞われる。

痛みが少し引くのを待って、ようやく亜里砂は目だけを動かし、ゆっくり周りを見回すことにした。
左の目蓋はどうやらガーゼか包帯のようなもので覆われているらしいことにも気付く。

(ここは…どこ?…病院…なの…?)


白くてとても広い部屋。

枕元に…頭を撫でようとして手を止めた大也と、環に肩を抱かれ亜里砂の手を必死に握りしめている美幸の姿があり、ゆっくり目を下に向けると、足元の方に、相変わらず前髪で顔の半分が隠れた松浦と、眉を下げしょげかえった顔の北柴の姿も見える。
山藤が扉近くに、控えめな様子で可憐に立っているのも見えた。

(ああ…みんないる。みんないるわ…。もう本当に大丈夫なんだ)

「あーちゃん!あーちゃんッ!」

涙で、いつも綺麗にしている化粧がすっかり落ちてしまい、酷い顔をした美幸が譫言のように呼びかける。

(美幸さんを、またこんなにも悲しませてしまった…)

「…み…ゅ……か…ハッ!」

涙を流しながら自分の名を呼び続ける美幸に胸が痛くなり、「大丈夫だからもう泣かないで」と言いたかったのに…うまく声が出ない。

(何これ?口がうまく動かないし、声が…出ないわ)

「あぁ…あーちゃん…可哀想に…」

そんな亜里砂を見て、美幸の涙が増す。


「無理に話そうとするな。目の周りや、唇や口の中も切れて腫れているし、首を強く締められた時に喉を痛めてしまっているんだ。暫くは声が出ないだろうと医者も言っていた」

大也が優しく亜里砂の頭を撫でて言う。

「ゎ…か…っ…」

(若様…!)

亜里砂の瞳に涙が盛り上がり、ポロポロと溢れ流れる。

その涙を大也が優しく指で拭った。

(助けに来てくれて…約束どおり私を守ってくれて…ありがとう…)

美幸に握られていない方の手を何とか動かして、大也の方に伸ばそうとすると…その指先が固定され、包帯が巻かれていることに気づいた。


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