急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
「今日も上のレストランだっけ?」
「いいえ。本日54階は北柴君が担当です。
私は18時半からベリーモールの方の2階の和バルで…タワー37階のH商事の男性と、30階の自然食品会社の女性、3×3のパーティーです」
「了解」
美幸の問いに答えながら、部屋の隅に作られた簡易更衣室に向かい、亜里砂は手早くグレーの地味なパンツスーツに着替え、化粧もとことん地味に見えるように施し直し、黒いゴムで髪をキュッと纏め上げて、仕上げとばかりにスクエア黒縁の伊達メガネをかける。
最後に鏡を見て口角を上げ、その顔に控えめな笑顔を貼り付けた。
「わぁ…いつ見ても見事な逆変身ですねぇ」
北柴が、支度を終え更衣室から出てきた亜里砂を見て感心したような声を上げる。
「逆変身って…何なのよ」
「蛹から蝶じゃなく、蝶から芋虫になったってことです。ほんと、どうなってるんですか?その美貌もオーラも存在感も全て消す術。
『加納さんにお礼を言いたいけど、ベリーヒルズ内で一度も見かけたことがない』って、お客様に言われるわけですよ。
その辺ですれ違っても、さっきまでの亜里砂さんと、『お仕事中』の亜里砂さんを、同一人物だって思う人は絶対にいませんし、その姿だと存在感無さすぎて、そもそも居る事に気づけません」
「いいえ。本日54階は北柴君が担当です。
私は18時半からベリーモールの方の2階の和バルで…タワー37階のH商事の男性と、30階の自然食品会社の女性、3×3のパーティーです」
「了解」
美幸の問いに答えながら、部屋の隅に作られた簡易更衣室に向かい、亜里砂は手早くグレーの地味なパンツスーツに着替え、化粧もとことん地味に見えるように施し直し、黒いゴムで髪をキュッと纏め上げて、仕上げとばかりにスクエア黒縁の伊達メガネをかける。
最後に鏡を見て口角を上げ、その顔に控えめな笑顔を貼り付けた。
「わぁ…いつ見ても見事な逆変身ですねぇ」
北柴が、支度を終え更衣室から出てきた亜里砂を見て感心したような声を上げる。
「逆変身って…何なのよ」
「蛹から蝶じゃなく、蝶から芋虫になったってことです。ほんと、どうなってるんですか?その美貌もオーラも存在感も全て消す術。
『加納さんにお礼を言いたいけど、ベリーヒルズ内で一度も見かけたことがない』って、お客様に言われるわけですよ。
その辺ですれ違っても、さっきまでの亜里砂さんと、『お仕事中』の亜里砂さんを、同一人物だって思う人は絶対にいませんし、その姿だと存在感無さすぎて、そもそも居る事に気づけません」