急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
「本当にあいつは喧しいな…」
「ふふ…あぁい…う…い」
(可愛い後輩なので許してやって下さい)
「あぁ…ぇお…おぃあえ…ん…」
(あの通り盛り上げ役で、我が社にとっては大事な人材なんです)
必死に話そうとする亜里砂を見つめながら、大也がふっと笑う。
「ああ…なにか…さっきから…。声が出ないのに必死に喋ろうとする亜里砂が、可愛過ぎてたまらないんだが…どうしてやろうか…」
(どうしてやろうか…って…)
亜里砂の頬が染まる。
「あぁ…いぅ…ぉえ…い」
亜里砂の口の動きを読んだ大也が、一瞬目を見張る。
「…ふっ…わかったよ…俺の大事な婚約者様の…望み通りに…」
次の瞬間、大也は柔らかく微笑み、亜里砂の唇に優しいキスを落とした。
(じゃあ…キスをしてください…)
「亜里砂…好きだ…。俺に『愛』というものを教えてくれたこと…心から感謝している。
俺はお前と…病める時も…健やかなる時も…共に前を向いて…互いを想いあいながら…未来を過ごしていきたい。死が…二人を別つ時まで…」
大也が愛の言葉の合間あいまに、亜里砂の傷を気遣いながら、その唇に優しく触れるだけのキスをする。
目を瞑り、何度も何度もその唇や頬にキスを受けた亜里砂は…。
池澤に殴られ、切れてボロボロになり、ズキズキと痛んでいた唇から、身体中に幸せがどんどん満ちていき、その多幸感が、胸の中の痛みや後悔や悲しみを、覆い、流し、優しく癒していくのを感じていた…。
(人を好きになり、愛し、愛されるということは…こんなにも素敵で幸せなことだったのね…)
二人の優しいキスは、しばらく途切れることはなかった。