急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
「俺様で、高飛車で、強引で…。他人の気持ちや状況など考えず、自分の要求だけ通そうとする、なんて最低で嫌な男だろうと思いました。
いくらイケメンでお金持ちでも、こんな人とはお友達にさえなりたくない。お祖父様の前でここまで言うのは申し訳ないのですが…私の中で、若様の第一印象はマイナス二百点から始まったんです…」
金持の横で控える湊の肩が、笑いを堪えるように、ふるふると震えている。
「ただでさえ恋愛感情に疎い私が、私の中でNGワードである『結婚』を、よりによってマイナス二百点の男とするなんて、到底考えられない…。若様が上から何と言ったって、無理なものは無理。あの夜も、最終的には何も言わずに走って逃げよう…そう思っていました」
大也の眉尻が情けなさそうに下がる。
「私は子供の頃から自分のことを、感情が揺れにくく、普段から心が荒ぶることも滅多にない性質だと思っていました。
何しろ、結婚披露宴の場で職場の後輩から『隣に座っている貴女の夫になる男は、自分と恋愛関係にあり、彼との子どもが自分のお腹の中にいる』と聞かされ、『だから彼を私に譲ってください』と訴えられた時でさえも、心が乱れることなく冷静に譲ってあげられるほどでしたから…」
亜里砂が自嘲気味に笑った。
「ですが…あの夜。若様のあまりの酷い求婚に、揺れないはずの私の心が、つい揺れて乱れてしまいました。
『恋』も『愛』も、自分の人生においてどうでもよい事で…。他人を愛したことも無く、恋すらしたこともない人が目の前に居ました。
『酷い』『最低』と詰りながら…まるで自分を見ているかのようで…強いショックを受けました。あの時、私が若様の頬を叩いて、ここで言った偉そうな言葉は、全て自分に返ってくるものばかりだったんです」
亜里砂は大也を見上げ「ごめんなさい」と詫びた。
「でも…。花嫁を探すという名目で、それから何度か若様とお会いするうち…若様の結婚に対する気持ちが、ここで聞いた酷いものから、かなり良い方向に変化したことを知りました。『目に見えない愛というものを探して見てみたい』のだと…。
しかもそれが、あの夜の私の言葉で心が動いたせいだと聞かされたんです。
自分の言葉で人生観が変わったという人を目の前にして、自分だけが何も変わらないでいられるわけがありません。
だから、私も『愛』というものを探して見てみたいと思うようになりました」
金持がうんうんと頷く。
「そんな時に若様から、自分と一緒に『愛』を探してみないか、と言われたんです。私のことが好きなのだとも…。それはとても不器用な告白でしたが…なぜかとても胸に響いたんです」