急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「不器用で悪かったな…」

大也が不貞腐れたように言うのに、亜里砂が「ふふっ」と笑う。

「でも…心はすごく動いたくせに、臆病な私はまだ逃げていました。
過去に大失敗してしまったこんな自分が、恋をしたり、人を愛したりすることが、ちゃんとできるのかと。
しかも、お相手は一護の若様なのです。
若様には『一護』という、とてつもなく大きなものがついて回る。そんな大きなものを背負って立つ人の隣に並ぶのに、自分が相応しい人間なのかと思うと、とても怖かったんです」

目を伏せた亜里砂に、金持が優しく言う。

「その『立場』に最初から相応しい人間などは、どこにもおらんよ。その立場に着き、懸命な努力をしてこそ、初めてそれに相応しくなれるのじゃ」

「はい。私がその事に気づいたのは、先だっての事件で、元婚約者に首をギリギリと絞めあげられて、死にかけているまっ最中のことでした」

顔を上げ、ニコッと笑って物騒なことを言いだした亜里砂に、大也、金持、湊がギョッとした顔をする。

「今回、命を失うかもしれないような事態に陥ってしまって…。苦しくて、本当にもうダメだと挫けてしまいそうになった時、頭の中に『亜里砂!馬鹿!負けるな!頑張れ!』という若様の声が響いたんです。
その声が聞こえていなかったら、多分…私は生きることを諦めてしまっていて、今、こうしてここに居ることはできなかったでしょう」

「亜里砂さん…」

「でも…私、その声が聞こえた時…負けたくないと…こんな形で人生を終えるのは嫌だと、強く思いました。
私も幸せになりたい。私も…誰かを一生かけて心から愛し…大事にして…病めるときも…健やかなるときも…その人の人生全部を預かって…守り続けていく覚悟をもって…ずっとずっと一緒に生きて行きたいと、そう思ったんです。
そして…その時に心に浮かんだのは若様の顔でした」

亜里砂は大也を微笑みながら見上げる。

「大事なのは『好き』か『嫌い』か。
一生そばに『居たい』か『居たくない』か。
そう自分の心に問いかけてみれば…私は若様の隣で幸せになりたいし、私も若様を一生かけて幸せにしたいと、強く思ったんです。
若様に助けられ、命を救ってもらった今、私が出来ることは何でもします。『一護』の後継の嫁に相応しくあれるよう、懸命な努力も惜しみません。
若様のこれから先の人生を、笑顔溢れる幸せなものにするために、私は精一杯頑張りたいと思っています」

亜里砂は金持を見つめ、花が咲くように笑って言った。

「だって…若様が幸せだったら…私も幸せなんですから。人を『愛する』って、こんな気持ちだったのですね…。若様と出会わなければ、私は一生知ることが無かったでしょう。
お祖父様のおかげで生じたこのご縁を、これから先、長い時間をかけて二人で大切に大切に育て、この気持ちをもっともっと深めていきたいと、私は心から思っています」

「ね!若様」と笑いながら隣の大也を見上げる亜里砂を、大也は愛しくて堪らないという顔で見つめ、微笑みながら何度も頷く。


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