急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
「亜里砂さんの気持ちはよぅくわかった」
暫く目を閉じて黙って聞いていた金持の目から、ポロポロと涙が溢れ出した。慌てた様子の湊が、傍にあったティッシュをとって渡す。
「会長、大丈夫ですか?お疲れになってしまったのではないですか?そろそろ横になられた方が…」
「よい。この機を逃せば次は無いやもしれん。今、この場で言っておかねばならんのじゃ」
金持は渡されたティッシュで潤む目頭を抑え、チンと鼻をかむ。
「亜里砂さんは…一護の家の事情は既にご存知だろうか」
「はい…。少しだけ、若様からお聞きしております」
「そうか…」
金持はふぅと溜息を一つ吐く。
「亜里砂さんは先程マイナス二百点と言うたが…複雑な家庭環境の中で、大也はこれでもまだ真っ直ぐ育った方じゃと儂は思う。
全てが過去の儂の過ちのせいなのじゃ。だが全てが良かれと思ってしたことじゃった。
息子の弱味につけ込んで、無理矢理意に染まぬ結婚をさせたことも…。子を成した息子夫婦がすぐにでも離婚するというのを、名だけの夫婦でも良いから続けろと、脅しまがいに引き留めたのも…。
生まれたばかりの大也を取り上げ、儂の手元で育てたのも…。
愚かな長男がしっかり者の嫁を迎えれば、少しはましになるのではないか…。互いに嫌々した結婚でも、長く続けていけばいつかはそこに愛というものが生まれるのではないか。
経営というものを知らず、興味もない親の元より、儂の下で直に導いてやった方が大也のためになるのではないかと…。
本当に…全てが良かれと思ってしたことだったのじゃ」
金持がまたティッシュを目頭に当てた。
「勝手ばかりをする大人たちの中で…これは幼い頃から我が儘の一つも言わず、儂や側近達から厳しい教育を受け、しっかり学び、一護の後継者たるべき道を、真っ直ぐに堂々と歩んだ。
しかし…実の父親と母親が、好きに各々家族のようなものを作りあげていく中、それを横目で見ながら、大也が誰にも言えぬ寂しく悲しい思いをたくさん抱えていたであろうことには気づいておったよ」
「祖父さん…知っていたのか…」
「当たり前じゃ。儂を誰だと思っておる。
学生の頃、父兄参加の行事があるごとに、お前が学園からの便りを、黙ってこっそり捨てていたことも全部聞いておるぞ。
まあ、その気持ちもよくわかる。あれらは、同じ学園に通うお前の異父母弟妹のところには行っても、お前のところには絶対に行くことはなく、完全に無視を貫いているような状態だったからな。入学式、参観日、運動会は勿論、卒業式も知らぬ顔じゃった。毎年の大也の誕生祝いさえ、これまで一度も寄越したことはない」
「そんな…」
亜里砂が眉を下げ、大也の手をぎゅっと握った。