急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
「大人気ない…、声くらいかけてやれば良いものを、とは思ったが。それもこれも全て儂のせいじゃ。
あれらは儂を酷く恨んでおる。あれらにも儂に対する意地があったのだろうよ。それを儂に向けず、実の我が子に向けるのはどうかと思うが…。
大也は気性といい、見てくれといい、若い頃の儂に、実によく似ておるからな。無視をして知らぬ体を装いながら、内心は複雑な心境だったのじゃろうて。
かと言って…あの歳になって一度もまともに働いたことも無く、自分らの贅沢な生活費が、どこから出ているのか考えもしない。だから不満があっても儂の庇護の下から自力で抜け出そうともせぬ。精々、大也を無視することくらいしか出来ぬのだ。
あれらは結局は、大人になりきれぬ子どものようなものよ。カナのように、大也を支える事を選んだ孫たちの方が、余程成熟しておるじゃろう」
「祖父さん…以前から一度聞きたかったことがある。俺の『大也』という名は、父さんがつけたというのは本当か?」
「そうじゃ…、そうだな…。先程、あれらは一度もお前に誕生祝いを寄越したことがないと言ったが、訂正じゃ。お前が生まれた日に、金吾が一度だけ大也を抱いて…」
金持が遠い目をする。
「『この子の名は大也にする』と。『これだけは譲れない』と言うた。子を産んだばかりの嫁と珍しく夫婦揃って…『これが、我らがこの子にしてやれる、最初にして最後のことだ』と…」
「……!」
「今にして思えば、お前の名こそ、両親からの、正に最初で最後の誕生祝いだったのじゃな」
「俺は…あの人に抱かれたことがあったのか…」
下を向き、黙って何かを考えているような大也の横で、亜里砂が小さく手を挙げた。
「あの…少しよろしいでしょうか」
「どうぞ」と金持が頷く。
「若様のご両親に、今日までまだお会いできていない私が言うのも、大変烏滸がましいことなのですが…」
亜里砂は、金持と隣の大也の顔を交互に見ながら申し訳なさそうに言う。
「今のお祖父様のお話を聞いていて、思ったんです。若様のご両親が、若様を幼い頃から『無視』しているのは、ご両親がお祖父様を恨んでいるから…先程お祖父様はそう仰られましたが。私は少し違うのじゃないかと思うんです」
「違う?」
「はい。若様が生まれた日のご両親のお言葉に、私はどこか『覚悟』のようなものを感じました」
「覚悟?」
亜里砂は頷く。
「これから、産まれたばかりの赤ちゃんを手放し、お祖父様に預け育ててもらうことに対する、お二人の覚悟のようなものを、です。
前に若様にも言いましたが…要らないからと、お祖父様に預けてしまうのであれば、態々お父様がご自分で名付けたりせず、それもお祖父様にお任せすれば良かったのです。
でもお父様はご自分で若様のお名前を『大也』と名付けられました」