急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
「私たちは影だから、仕事にオーラも存在感も要らないのよ。むしろ邪魔。それより柴ケンは準備しなくていいの?」

美幸が声をかける。

「俺はこのまんまで大丈夫で〜す」

「隠すオーラも存在感も、元から全く無いもんね」

「社長のバ…ばー〜か…」

「あんた今、ババァって言いそうになったわね!」

「ち!違います!あ…!俺、18時に坂田様、田嶋様とホテルロビーで待ち合わせしているんで、もう行こうかな〜っと…。お二人をブライダルサロンにお送りして、引き継ぎをした後…19時から54階『三つ谷』で、石橋様と田中様のお見合いに臨席しま〜す」

北柴が早口で言いながら、慌ててタブレット端末を持って飛び出していく。

「逃げた…」

「逃げましたね…」

「あーちゃん…。新人に、バカって言われるのと、ババァって言われるのと、どっちがショックだと思う…?」

「クソ…がつかなかっただけ、まだマシじゃないですか…?」

美幸の背後で決裁書を差し出しながら、経理事務を担当している植田環(40歳)がしれっと言う。

「これ目を通して押印お願いします」

「…くっ…くそばばぁ…って!私が言われる日が来ようとは…」

「ぷぷ…っ!」
松浦がキーボードを叩きながら吹き出し、肩を震わせた。

「ぷっ!ふふ…。美幸さんはババァじゃないですよ。魔法でも使ってるみたいに、いつまでも若くて綺麗じゃないですか。じゃ、私もモールの方に行ってきますね〜」

呆然と環を見上げる美幸を見て、とうとう亜里砂も吹き出し…持っていたタブレットで、ついつい笑ってしまう口元を隠しながら、オフィスを後にした。

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