急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
「もう!私がどうしても貴方と結婚したくないってごねていたらどうしたんですか!」
亜里砂は呆れて口を尖らせたが、なぜか嬉しさの方が勝り、大也を睨みながらも口元がふるっと緩むのを止められない。
「どんな手を使ってでも手に入れたさ…」
大也は亜里砂の頬に手を当て、チュッとその唇に優しいキスを落とす。
「若様!カメラが!監視されてる!」
亜里砂が大也の胸をぽかぽかと叩く。
そうこうするうちに、エレベーターはどんどん上まで上がり、大也の執務室があるベリータワー最上階に止まった。
執務室を通り過ぎて奥の階段を上り、屋上に出る扉を開けて外に出ると、途端に強い風に煽られる。
よろめいた亜里砂の肩を、大也が慌てて抱いて引き寄せた。
「本当にこれで行くの?」
ヘリのローターが回る音に負けないように、亜里砂が大きな声で訊いた。
「ああ…祖父さんも仕事を休めと言ったし、カナも勧めるから、五年ぶりに三日間の休みをとってみたんだ。
勿論、お前の休暇もDの奥方に許可を貰っているから安心しろ」
「また勝手に決めて!ちゃんと事前に相談してくださいよ」
「いっそ新婚旅行と称して海外にでも行ってゆっくりしたかったんだが、今はどう頑張っても休みが三日しか取れなかった。
カナに言って、死ぬ気で休みをもぎ取らせるから、新婚旅行はまた次回、ひと月かふた月かけてゆっくり行くことにしよう」
(ひと月やふた月のお休みなんて、きっと無理に決まっているわ。若様が、女性と過ごすためにお仕事を休むこと自体が奇跡だって、カナちゃんも言ってた。でもあの夜、結婚に関してあんな不実なことを言っていた若様が、私のためにこんな風に言ってくれることが嬉しくてたまらない)
亜里砂は山藤に、大也が今日一日の休みをとるために、ここ数日どんなに忙しく働きづめだったのか、実はこっそり聞いていたのだ。
三日間もの休みをとるためには、きっと想像もできないくらいの仕事量をこなしたのであろうに、疲れも見せず、相変わらず憎らしいくらい凛々しく涼しい顔をした目の前の、このあと僅かで『夫』になる、 SSSの男。
これまでだって、分刻みでスケジュールが組まれている中、自分に会うために…自分を助けるために、時間を作るのはとても大変なことだったのだろう、と亜里砂は想像する。
(いつからこんなにも好きになってしまっていたんだろう…)
亜里砂は目の前のSSS男が愛しくてしょうがない。
「とりあえず、今日この後の予定は全て俺に任せておけ。
亜里砂を幸せにするための第一歩として、忘れられない想い出にしてやるから…」
大也が自信たっぷりな様子で笑う。
「次は必ず要相談ですからねーー!」