急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
二人が乗り込むと、すぐにヘリはベリータワーの屋上を離れて大空に飛び立った。
空の上で大也から亜里砂に渡されたのは、深紅の、ひと抱えある薔薇の大きな大きな花束。
「わぁ…綺麗」
嬉しそうに、花に埋もれ左薬指の指輪を見つめる亜里砂の瞳に涙が浮かんだ。
かつて同じように大きな花束を贈ってくれた、未だ意識が戻らない男を思い出す…。
ヘッドセットをつけた大也が、美麗な片眉を上げ「どうした?」と訊く。
亜里砂はもう一度じっと指輪を見つめると、潤んだ瞳で大也を見上げ、次の瞬間、にっこりと微笑んだ。
「これでいつも若様と一緒にいられると思ったら嬉しくて。だって『ダイヤ』ですから。
若様、好きです。愛してます。私に、人を愛する気持ちを教えてくれて、本当にありがとう。
病める時も健やかなる時も…。お仕事で遠く離れている時は、心だけでも…。
死が二人を別つ時まで…ずっとずっと私の傍にいて下さいね!
最期に『あなたのおかげでとても幸せな人生だった』って笑って言えるように、これから共に精一杯愛し合いましょう!」
「……当たり前だ!」
左手を掲げながら、幸せそうに笑う亜里砂の唇に…同じく幸せそうな若様がキスの雨を降らせ、とても遊覧どころではなくなってしまったのは言うまでもない。
その後、役所の隣に立つビル屋上のヘリポートへと立ち寄り、二人は無事に婚姻届を提出し、晴れて夫婦となると、再びヘリで大空へと飛び立った。
一護金持の容態が急変したのはその夜。
永遠に帰らぬ人となったのは、翌日の明け方のことだった。
その死に顔は安らかで…とても幸せそうに…どこか満足気に笑っているように見えたという。