急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
バーン!
「亜里砂さ〜ん!坂田様と田嶋様、ついにご成婚で〜す!」
「柴ケン!ドアは静かに開けて静かに閉めろって、いつも言ってるでしょ!
それに、ご成婚の報告は、まず社長である私にしなさいよ!」
「あ〜社長、すみませ〜ん!」
すみませんと言いながらも、ちっとも反省した様子はない『柴ケン』こと、今年4月に入社したばかりの北柴謙太郎(23歳)は、見えない尻尾をブンブンと振りながら、一つの席に駆け寄った。
「亜里砂さん!ありがとうございます!今回も亜里砂さんのアドバイス通りにしたら、お客様の背中をドンっと押すことが出来ましたよ!」
「そう…良かったわね…」
加納亜里砂(27歳)は、データ入力中のパソコンから目を上げずに答えた。
「あ〜!チクショウ!相変わらず反応薄いな!
俺、今回は途中さすがにダメだろうと諦めかけてたんで、このご成婚めちゃ嬉しいんですよ!
さすが!『不可能を可能にする女』加納亜里砂!」
はしゃぐ後輩に、亜里砂はようやく手を止め、パソコンから目を上げた。