私を甘やかして、そして、愛して!
~ プロローグ ~
今から5年前の秋のことである。
ある恋人同士が山で遭難し
行方不明のまま捜索が打ち切られた。
地元の人々の間では霧が濃く危ない山だと言われていたが
山腹にとても美しい小さな湖があり
深い森の中にひっそりと湧いていた。
湖底は透き通るように青く
湖水は夏でも刺すように冷たい。
冬は山全体が凍り
もちろん湖もカチカチに凍った。
今まではそうであった。
ところが
遭難した恋人たちが見つからないままの冬は
雪が降っても積もらず
いつもは凍るはずの湖も
湖面には静かなさざ波が立つほどに
普通でない不気味な雰囲気が
森の中にあった。
この不自然で異様な状況も
ひと伝いにはならず
封印された遭難事故として
世間から忘れられた。
なぜなら
その男女の家族から名乗りがなかったことで
余計に事件性もなく
不運な人生を閉じることになった二人に
誰かがしてやれる何かもなく
ただ安らかに眠ってくれることだけだった。
人知れずひっそりと。
ある恋人同士が山で遭難し
行方不明のまま捜索が打ち切られた。
地元の人々の間では霧が濃く危ない山だと言われていたが
山腹にとても美しい小さな湖があり
深い森の中にひっそりと湧いていた。
湖底は透き通るように青く
湖水は夏でも刺すように冷たい。
冬は山全体が凍り
もちろん湖もカチカチに凍った。
今まではそうであった。
ところが
遭難した恋人たちが見つからないままの冬は
雪が降っても積もらず
いつもは凍るはずの湖も
湖面には静かなさざ波が立つほどに
普通でない不気味な雰囲気が
森の中にあった。
この不自然で異様な状況も
ひと伝いにはならず
封印された遭難事故として
世間から忘れられた。
なぜなら
その男女の家族から名乗りがなかったことで
余計に事件性もなく
不運な人生を閉じることになった二人に
誰かがしてやれる何かもなく
ただ安らかに眠ってくれることだけだった。
人知れずひっそりと。