私を甘やかして、そして、愛して!
今や行方不明にされた翔平と久実は

そんなこととはつゆ知らず

窮屈だったはずのシュラフの中で

ひっしと抱き合いお互いの温もりを共有することで

遭難という境遇がどこかへ飛んで行ってしまったようだ。

「俺が起きているから、少し眠った方がいい。」

「ダメよ。絶対ダメ。」

久実はキッパリと言った。

「信用ないんだな。」

「そうじゃなくて、せっかく気持ちが分かち合えたのに、これ以上最悪の事態を招きたくないだけ。」

「久実の言う通りだな。交代で眠る案は却下だ。」

「それより、下山したら一緒にご飯食べたいの。」

「ご飯だけでいいのか?」

「そ、それは、えっと、状況次第ってことで。」

「俺が欲しくないのか?」

「そんなハッキリクッキリ言わないでくれない?」

「イエスかノーだと思う。」

「もちろん、イエス。」

「それを聞いて安心した。」

「でもね、満腹で爆睡しても怒らないでね。」

「爆睡ね、あり得る。」

再び二人の笑い声が深夜の山の中に響いた。



  ~ to be continued ~


ご愛読をいただきましてありがとうございます。
結末まで更新いたしました。
また最後は存分に泣けるシーンもございますので
お楽しみいただければ幸いです。北原留里留

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