私を甘やかして、そして、愛して!
初冬に片足を突っ込んでいる晩秋のある週末に

私はいつものように単独で山に入った。

きれいな湖が売りの

標高が比較的中級レベルの山である。

特に難所もなく

登りやすいだろうと思って選んだ。

霧が出るのはどこの山でも当たり前なので

特に気にせず入山口の立て札の前で

自分の吐く白い息が空気中に散るのを眺めた。

この山の頂上を超えて次へと連なる山の中腹に

秘湯があるということも調べてあった。

当然行くしかないと好機の思いでやって来た。

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