私を甘やかして、そして、愛して!
しばらく歩くといきなり霧が晴れて

周りの木々がはっきりと見えた。

山道は目の前に現れた湖に沿って続いていた。

「わぁ、ここ、最高!」

「すっごくきれい!」

「絵になる!」

「真っ青。」

「水が透き通って、水でないみたい。」

ひとしきり大声でわめいた。

「来た甲斐があった。」

夏だったら泳げたかもと思いながら

心の中でも存分にはしゃいだ。

湖を視界に入れてゆっくりと歩いた。

大きさは50メートルのプールくらいだ。

誰もいないのか辺りは静まり返っていた。

ふと向こう岸を見た。

人が歩いていた。

男女二人だ。

肩を寄せ合って恋人たちのようだ。

「こんにちは!」

私は嬉しくて大声で叫んだ。

両手を大きく振って挨拶を送った。

聞こえたはずだ。

しかし彼らは気づかない様子で

こちらを見ようともしなかった。

「変なの。絶対聞こえたはずだけど。」

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