翠玉の監察医 弱者と強者
過去のことを思い出してしまうからと逃げていてはいけない、そう蘭は書き込みを続けてくれているゼルダたちを見て思ったのだ。

「私は何もできていません。なので、子どもの心を少しでもわかりたいのです」

三国家の人間に会わなければ苦しむことはない。蘭はブローチを握り締める。蘭自身は理央のような「普通」の子どもではなかった。そのため、自身のことは参考にならない。

「俺も一緒に行っていいですか?」

圭介に見つめられ、蘭は「構いませんが、何故ですか?」と訊ねる。圭介も聞き込みを頑張ってくれている。図書館へ行く必要などない。

「神楽さんの手助けをしたくて……」

そう言った圭介の頬は赤い。蘭は「なら一緒に行きましょう」とその赤い頬を気に留めることなく歩き出す。その後を圭介は少し寂しげな顔をしてついていく。

図書館のある通りは多くの人で賑わっている。夕方のためか買い物に来ている主婦や、友達と遊んでいる子どもたちの姿が多くあった。
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