翠玉の監察医 弱者と強者

「子どもって元気ですね。羨ましいです」

圭介がボール遊びをする子どもたちを見て言う。そして「子どもって落ち着きがない子も多いらしいですよ。理央くんもきっとそうだったんじゃないですか？」と蘭を見つめた。

「子どもの心理というものは、私にはよくわかりません。私の親はもういませんので話を聞くこともできませんので」

蘭の頭に浮かんだのは、思い出したくない記憶の一部だった。漂う血の匂いやリビングで倒れている両親が映る。蘭は強く目を閉じ、圭介が「すみません」と謝る。

「いえ、深森さんは何も悪くありません。私が全て悪いんです」

蘭は無表情に戻り、もう一度歩き出す。その時、近くにあったカフェから桜木刑事が出てきた。蘭は「桜木刑事、お久しぶりです」と冷静に言うが、圭介はとても驚いている。

「桜木刑事！どうしてここに？」

圭介の問いに、「天良さんがこのカフェによくいると聞いて来てみたんだよ」と桜木刑事は言う。そしてため息をつきながら続けた。