ご縁婚  お見合い結婚のはずですが、溺愛されています?
「そうなの?これ、このまま順調だと一時間以内に産まれるわよ」

なんてこと、雅貴さん間に合うかしら。

「雅貴さん、羽田からこっちに向かってるの」

痛くて痛くてベッドの柵を思いっきり握って耐えてながら希代美さんに伝える。

「お義母さん、茉奈花ちゃんのお母さんって茉奈花ちゃん産む時どうでした?」

その問いかけにお母さんは答えた。

「初産なのに病院に着いた時には破水からで、一時間のスピード安産だったわ」


えぇ、この流れお母さん譲りってこと?
なんて、考えられたのはそこまでで、休みなく襲い来る痛みに必死に呼吸して耐える私。

「茉奈花ちゃんもかなり早くなりそう、分娩準備始めて!茉奈花ちゃん、ベッド動くからね」

そんな声かけと共にベッドが動いて出産態勢へと動かされる。
ぐぬぬ、柵が、私の耐えるスポットが!
などと思っていた矢先廊下が騒がしくなり、分娩のための看護師さんと共に予想より早く雅貴さんが来てくれた。

「茉奈花!大丈夫か?」

雅貴さんが見えると、痛みだけだった私に感覚が戻ってきた。

「うん、早かったね」
「ヘリ使ったからな」

さすが航空会社の副社長。
最短で駆けつけてくれたのね。

「茉奈花、頑張れ」

握ってくれる手を頼りに何とか痛みの波を耐えていく。

「はい、雅貴くんどいて!内診するから」

サクッと追いやられた雅貴さんは控えて、私は再び希代美さんの内診を受ける。

「早い、子宮口ほぼ全開。茉奈花ちゃん次痛みが来たらいきんでいいわよ!赤ちゃん下がって頭ももう触れるからね!」

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