麗しの彼は、妻に恋をする
恐る恐る試着室から出ると、ソファーに腰かけていた和葵が振り返った。
「ああ、いいねぇ」
立ち上がって繁々と見つめながら、彼は満足そうにうんうんと頷く。
「えっと、あのぉ……。体の線が、出過ぎでは、ないですか?」
横から「そんなの気にしないでいいのよぉ、ドレスなんてそんなものなんだから、素敵よぉ」と嬉々とした声をあげるのはメイクアップアーチストのお姉さんのような話し方をするトニィお兄さん。
柚希の腰を抱いた彼は、耳元で「僕が一緒の時だけはいいんだよ」とそっと囁いた。
今回のパーティは、漆芸の某作家先生が人間国宝になられたことを祝う祝賀会だという。陶芸ではないのでパーティに知人がいる可能性は低いと思うが、それでも万が一ということがある。
益子での地味な田舎暮らしを続けるためにも、結婚したことは誰にも言っていないし知られたくはない。だから本当はパーティになど行きたくはないが、これは約束なのでがんばるしかない。
「ああ、いいねぇ」
立ち上がって繁々と見つめながら、彼は満足そうにうんうんと頷く。
「えっと、あのぉ……。体の線が、出過ぎでは、ないですか?」
横から「そんなの気にしないでいいのよぉ、ドレスなんてそんなものなんだから、素敵よぉ」と嬉々とした声をあげるのはメイクアップアーチストのお姉さんのような話し方をするトニィお兄さん。
柚希の腰を抱いた彼は、耳元で「僕が一緒の時だけはいいんだよ」とそっと囁いた。
今回のパーティは、漆芸の某作家先生が人間国宝になられたことを祝う祝賀会だという。陶芸ではないのでパーティに知人がいる可能性は低いと思うが、それでも万が一ということがある。
益子での地味な田舎暮らしを続けるためにも、結婚したことは誰にも言っていないし知られたくはない。だから本当はパーティになど行きたくはないが、これは約束なのでがんばるしかない。