麗しの彼は、妻に恋をする
和葵が耳元でそう囁き、ふと振り返ればそこに夏目がいたのである。


輪の中から外れ、夏目とふたりきりになると、ようやくホッと一息つけた。

「随分、化けましたね」

「はい。トニィさんの作品になりました」

クックックと夏目が笑う。

「上手いこと言いますね」

「でもお陰でホッとしました。万が一にも私を知っている人に会っても、これだけ変われば私だって気づかないでしょうから」

「なるほど。さあ、何か食べましょう。」

あまり沢山食べてお腹がぽっこりと出てしまっては、せっかくのドレスが台無しだ。やむなく少しだけ皿に取った。

「自分の夫が、女性たちに囲まれているのを見るのは、どんな気分ですか?」

夏目にそう聞かれて、和葵を振り返った。

女性が三人。彼を取り囲むようにして話をしている。

「人気あるだろうなぁと思っていので、やっぱりなぁとは思いましたけど。意外なほど、皆さん和葵さんの結婚に対して寛大というか、気にしてない感じで」

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