麗しの彼は、妻に恋をする
さすがに子供の頃から一緒に暮らしていただけのことはある。祖母には全てお見通しなのだろう。

柚希は肩の荷が下りた気がした。

もう隠す必要もないのだと思うと、誰にも言えなかった不安が口から溢れ出してくる。

「家柄が違い過ぎるし、和葵さん素敵過ぎるし、私なーんもにわからないし」

「はいはい、それで?」

「和葵さんの部屋に行っても、家政婦さんが全部家事をしてくれるから私なーんにもすることないんだよ?」

「おお、楽でいいねぇ」

「それはそうだけど……。私が益子で陶芸を続けるのもいいって言ってくれて、だから通い妻だけど、でもそんな中途半端なの変だし」

「でもそれは、柚希が陶芸を続けたいからでしょう? 和葵さんの部屋じゃ陶芸は無理なんだし」

それはわかっている。わかっているけれど、ただ言ってみただけだと聞き流した。

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