麗しの彼は、妻に恋をする
「でね、パーティに行くの。すっごいドレスを着て着飾って。まわりはみーんなセレブで、和葵さんはどこに行っても人気者で、いっつも女の人に囲まれて、あの人はみんなの和葵さんで。――それはいいの。美術品を買ってくださる大切なお客さまだから。でも、でもね。みんなすっごく、物凄く綺麗なんだよ? 私なんかこんなだし、――和葵さんに、いつ捨てられちゃうんだろうって」

――怖くて、怖くて、仕方がないんだよ。

勢い余って涙も出てきた。
ぐすぐすと鼻をすする柚希に、祖母はティッシュの箱を差し出す。


ひとしきり泣いた頃を見計らって祖母が言った。

「やれやれ。柚希はね、なんでもかんでも、あきらめ過ぎなんだよ?」

「――だって」

「それで、なにか努力をしたの? もっと綺麗になるとか、冬木陶苑の妻として勉強するとか」

「努力した分、あとが辛いもん……」

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