麗しの彼は、妻に恋をする
やがて夜が明け、朝になった時、
柚希のスマートホンがブブブと小さく揺れた。
見ればそれは和葵からのメッセージで、用事がって益子に向かっているという。
『用事が済んだら、家に寄るね』
――ええ? 和葵さんが家に?
これは一大事だと高鳴る胸を落ち着かせながら、『了解です』と返事を送った。
「あの、私ちょっと家に帰りますね」
「ゆっくり休んでおいで、無理しなくていいから。あ、そうそう」
思い出したように立ち上がった芳生は、「ちょっと来て」と言って工房へ向かう。
なんだろうと思ってついて行くと、彼は「どれがいい?」と言った。
工房のテーブルの上には抹茶碗や大皿、花器などが桐箱と一緒にずらりと並んでいる。
「結婚のお祝い、おめでとう」
「……芳生さん。ありがとう」
なんだかんだ言っても、ちゃんと祝ってくれた。
それがどれほどうれしいか。
我慢したけれど、本当は泣きたいくらいうれかった。
芳生のおすすめを聞きながら、柚希は抹茶碗を選んだ。