麗しの彼は、妻に恋をする
その答えは、どうやら間違っていたのかもしれないと思った時は遅かった。

一瞬のうちに彼の瞳は氷のように冷えていった。

そしてそのままその瞳は柚希に近づいてきて、息が止まるほどの強い口づけのあと彼が言った。

「ねぇ柚希。妻が他の男とイチャイチャしながら何かを選ぶなんてことを、僕が許すと思ったの?」

「え、イチャイチャなんてしてな……」

「これがいい? それともこっちかしら? そういうのをイチャつくって言うんだよ」

「あ、いえ、その……」

――た、助けて!




「はぁ」

――優しい人ほど、怒ると怖いんだなぁ。

あの後、芳生さんのところに行くことすら、許してもらえなかったからなぁ。

というより言い出せなかった柚希の代わりに、彼がひとりで芳生のところに行ったのである。

そこでどんな話があったのかは、柚希にはわからない。
あとになって、焼きあがった柚希の器は、和葵が取りに行くことになったからと聞かされただけだ。

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