麗しの彼は、妻に恋をする
彼と入れ替わりに入ってきたのは、看護師の服装をした女性だった。

「点滴終わったんですねー。どうですかぁ? 具合は」

「あ、はい。すみません。もう大丈夫です」

腕から針を外してもらって、柚希はベッドを下りた。
ふと気が付けば着ているのはバスローブで、服はハンガーに掛けてある。

「あれ? 服?」

「ああ、冬木さまが用意してくださいました。着替えは私がさせてもらいましたから、ご心配なく。
 お洋服は、そこのクロゼットにかけてありますよ」

「あ、そうでしたか。重ね重ねすみません……」

「いえいえ」

急いで服を着替えた柚希は、看護師さんを追いかけるようにして部屋から出た。

――うわぁ。

リビングと思われるその部屋は、明るくてとても広い。

壁には本物の絵画。ガラス張りの棚の中に陳列している器。
アンティークなスタンドライトは、暗い夜に見たらさぞかし美しい光を見せてくれるだろう。

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