麗しの彼は、妻に恋をする
もし、家事も子育てもの生活費の工面も、君の面倒は全部僕が見るから任せてよ、なんていう仏のような人が降ってきてくれれば別だけれど、それこそ夢まぼろしの物語。

そんなサプライズをしてくれるほど、神さまだって甘くはないだろう。

――あの人の愛人か。

もしかするといい話なのかも?

想像するだけなら自由だし、ということでちょっと考えてみた。

まず、彼の愛人になれば、経済的にも余裕が出来る。

生活のための器を作らないで済む。好きなだけ時間をかけて、こだわり抜いた器を作るだけでいい。

彼の生活には立ち入らないで済むというのも魅力だろう。

世間的にはどうあれ、体で稼いでいると割り切れば、いっそ清々しいような? しかも相手はあんな王子さまのような素敵な人なわけで、むしろこっちからお金を払っても愛人にして頂くべきではないだろうか?

――悪くないじゃない?

そこまで考えてクスッと笑った。

でもまぁ、それは冗談じゃなければの話だ。
< 53 / 182 >

この作品をシェア

pagetop