麗しの彼は、妻に恋をする
祖母は祖父が残した小さな一軒家に住んでいる。

「おかえり、ご飯出来ているから手を洗っておいで」

「わーい。肉じゃが。美味しそう」

柚希には身内が祖母しかいない。

両親は柚希が子供の頃に離婚をしていて、父や父方の親戚とは縁が切れている。

両親の離婚以来、母と一緒に母の実家で祖父母と一緒に暮らしていたが、祖父は柚希が高校生の頃、母は柚希が大学生の時に病気で亡くなった。

七十代とはいえ元気な祖母は、近くの総菜屋にパートに出ている。
生活にそれほど余裕があるとは思えないが、個展などでまとまったお金が入った時に柚希がお金を渡そうとすると『自分の将来のために貯金しておきなさい』と受け取ってはくれない気丈な人だ。

「個展のほうは、どう? 売れた?」

「うん。目標超えたよ。オーナーさんも来年もやってみないかって話をくれたの」

「あら、よかったねぇ」

「お友だちにもお礼言っておいて、わざわざ来てくれてうれしかったよぉ」

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