麗しの彼は、妻に恋をする
そういえば冬木陶苑にも、ひとつだけ彼の作品の、抹茶碗があった。

――いい茶碗だったなぁ。

いつか自分の作品もと思いながら、茶碗が飾られるのを夢にみつつ柚希は深い眠りについた。



ガラガラガッシャーン!

「うわっ」
目覚ましの音よりも早く、響く音に目を覚ました柚希は、まだ眠い目をこすりながら布団から飛び出した。

「お祖母ちゃん?」

音がした台所に駆け込んだ柚希が見たのは、座り込んで呻いている祖母の姿。

「どうしたの! おばあちゃん大丈夫?」

「こ、転んじゃって、足が」

右膝がどうにかなっているらしい。

「わかった。動いちゃだめよ。すぐ救急車呼ぶから!」



それからは大変だった。

診断結果では、骨折はしていないがヒビが入っているという。

折れなくて良かったと思いきや、そういうわけでもないらしい。医者の説明によれば、年齢的にも完治するには時間がかかるでしょうと言われて、祖母はそのまま入院ということになった。

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