麗しの彼は、妻に恋をする
続いて、左手を掲げてみる。

薬指で輝くそれは、邪魔にならないよう高さを抑えたダイヤモンドが並ぶ結婚指輪だ。

右手で指輪をくるくると触ると、多少は現実感が湧いてくる。
――気もする。

やっぱり結婚しちゃったんだよなぁ。

「君のおばあちゃんには、本当に報告しないでいいの?」

「ええ。突然の結婚で驚かせたくはないので、今はとりあえず恋人が出来たということに」

和葵は「ふぅん」と言って、首を傾げる。

「挨拶に行く必要ができたら言ってね」

「はい」

成り行きで決めた、条件付きの結婚。

婚姻届けを出すだけかと思ったら、彼は普通に結婚式をしようか? と言った。
柚希が望むなら大勢の客を招いて披露宴をしようと。

それは遠慮したいと柚希は頭をさげた。

気持ちが付いていけないこの状況で、結婚を祝ってもらうなんて無理だ。
いくらなんでも突然過ぎるし、そこまでするとなれば、祖母にも言わないわけにはいかない。
秘密にしたいのに、益子の陶芸仲間にもバレてしまう。

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