麗しの彼は、妻に恋をする
自分でもわかっている。
特に才能があるわけでもない、素朴さだけが取り柄のこんな女で、本当にいいんですか？　と。

でもそれは半年の契約だから。

短い間の契約妻だということを、彼の両親もきっとそれを知っているからに違いないからと思った。
そして。うれしさのあまり、それを忘れてはいけないの自分に言い聞かせた。

彼に告げられた必須条件は、三つ。

一週間にいち度。月曜はベリーヒルズのマンションで会うこと。
二つ目はパーティなどで妻同伴などの必要がある時は応じること。
あと一つは後から追加された条件で、彼の都合で離婚したくなった時は離婚に応じるということだ。

もちろん柚希にはなんの文句もない条件だ。

何しろ結納金として約束通り一千万のお金が振り込まれたのだ。なんだったら明日離婚と言われてもかまわないくらいの気持ちで、割り切ることにしている。

とにかく、そう思わないとやっていられない。

「ところで和葵さん、服は着ないんですか？」

「え？　履いてるじゃん、パンツ」

確かに深紅のパンツは履いている。

< 89 / 182 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop