麗しの彼は、妻に恋をする
でもそれは下着であって、服と言えるものなのか。裸よりはいいけれど間のやり場に困ってしまうことに変わりはない。

「僕はね、もともと家では裸なの。君が泣いて頼むから仕方なくパンツを履いているわけ」

「別に泣いてなんかいません」

「じゃ、脱いでいい?」と彼はパンツに手をかけた。

「泣きますよ!」

クスクスと和葵は笑う。

薄く割れた腹筋に逞しい大胸筋、波打つ上腕二頭筋。きれいな形の筋肉は付き過ぎず細すぎず見事な肉体だと思う。

セレブなお客さま相手の仕事なので、身だしなみに気を付けているのかもしれないが、それにしても素晴らしい。綺麗な肌。

「ん? なに?」

「もしかして、メンズエステとかいってらっしゃるのかなぁーと」

「ああ、通っているジムにはね、そういうサービスもあるから。あ、そうそう君も行っておいで、場所は教えるから」

せっかくの好意だ。行くことはないだろうけれど、一応笑みを浮かべて頷いた。
「はい」

ジムには行かなくても、運動不足ではない。

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