麗しの彼は、妻に恋をする
『細いだけかと思ったら、一応筋肉らしきものもあるんだね』
昨夜ベッドのなかで、柚希の二の腕をツンツンしながら彼がそんなことを言った。

粘土をこねるのと、冬に備えて工房の薪ストーブ用の薪割りのせいだと思いますと答えると彼は笑ったが、柚希にしてみたらそれが普通の生活なのだ。

それにしても面白い人だと思う。

どこまでも陽気だし、裸族であるのも納得の、知れば知るほど気さくな人だった。

いま彼はソファーでゆったりと足を組み、雑誌を読んでいる。

シャワーを浴びて肩にタオルをかけたまま、髪はまだ少し濡れたままのボサボサ頭。パンいちでいるのになぜだか優雅だ。

左手の薬指にはしっかりと指輪がはまっている。
自分がしている指輪とペアであることが、柚希には不思議な気がして仕方がない。

「和葵さん」

「ん?」

「私、何をすればいいですか?」

「あ、もしかして暇?」

「はい」

「じゃあ、もう一回、する?」

――する? えっ!

夕べもしたというのに、朝からいたしたばっかりだ。絶句とともに全身が赤くなる。
< 91 / 182 >

この作品をシェア

pagetop