過保護な君の言うとおり


「僕のこと嫌いって言ったのに?」



なんだよ、根に持ってたのかよ。そんな風に意地悪なことを言いながらも佐久間は花が開いたような、私がずっと見たかった笑顔だった。


「私はそう言ったのに、あんな手紙をよこしてきたじゃないか」


「だって玲ちゃんにあんな顔で嫌いなんて言われても信じれないよ。むしろ、なんかキュンとしたし、僕」


「お前って、結構やばいな」



 その様子を見ていた、焼きそばパンを持っている人が


「宮代さん、こいつほんとにやばいっすよ」とニヤニヤしながら言ってくる。



佐久間は「余計なこと言うな神田」と何だか私の知らない親しみのある、

でもちょっと鬱陶しいような感じで言い返したのが新鮮だった。




神田は肩をすくめて、ほらな俺らにはこんなに冷たいんだぜ? と後ろにいるもう一人の男に同情を求めている。




「玲ちゃん、こんなやつの話聞かなくてもいいんだよ」


「いいや、気になるな。佐久間のこと教えてくれよ神田」



私はウキウキした気持ちで神田のもとへ行く。神田は私じゃなくその後ろを見ていた。



どうしたのかと聞けば顔を引き攣らせて


「あー、えーと。やっぱり佐久間はクラスでも優しいなあ、ニンキモノだし」と挙動不審に答えた。


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